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開催中『柳井貴光展 -蒼い景-』光と影そして景とは [開催中の展示会情報]

今回のタイトル「蒼い景」には・・・
色を表す「アオ」には、青、蒼、碧、滄…色々ありますが、なぜ「蒼」なんだろう。
同じく「カゲ」にも、景、陰、影、蔭…などの中でより一般的な影じゃなく景なのか。
という疑問があり、作家ご本人にぶつけてみました。

その回答をご紹介する前に、前回の「蒼」に関する記事に引き続き、今日は「景」の方を考えてみましょう。

「カゲ」の漢字表記のことをちょっと調べてみますと、影、陰、蔭、翳・・・など複数あります。
他にもいくつかありますが、使用頻度の上位で言うとこのあたりまででしょうか。
一部の文章には「光」と書いて「かげ」と読ませている場合もあるようです。
漢字の使い分け方によって色々な意味があると思いますが、それは辞書にお任せして・・・。

「影・陰・蔭・翳」について調べてみると・・・

『言葉の風景』(野呂希一、荒井和生 著)には

「見渡す限りの緑の景(かげ)を「萬緑」といいます。光は同時に陰となります。
光が映し出すものは、たとえば日や月、燈火など明暗を問わずに「かげ」と呼んできました。
「影」は実体がないものにつかわれ、「陰」は陰影のことを表しています。
山の光がよくあたっている面を「光つ面(かげつおも)」と言っていましたが、やがて「影面(かげとも)」に転じました。
障子や地面に光があたって人影がうつるのは「影法師」。光がほのめいたり、影がうつることを「影(陰)ろう」といいます。「陰日向」とは日のあたるところとあたらないところという意味ですが、人目のあるなしで言行が違う意味の方で使われています。」

とあります。

さらにインターネットで検索していくと興味をひく記事がいくつかあったので抜粋します。

『西洋絵画の画材と技法』(ブログ、http://www.cad-red.com/jpn/index.html)には、
「影」はモノクロで「景」はカラーである、と記載があります。

ちなみに同じ文章の中で「カゲ」にカラーがあるのか?と言う疑問に対しては、
水面に映るカゲ(山、木々、空、等々)といえば納得されるでしょう。なぜ、風景、景色、光景に「景」の字があるのかも、それが色のついたもののカゲ(姿)を示すからなのです。」とありました。

ちなみにこのサイトでは「陰」と「蔭」の違いにも言及していて、
「「陰」は例えばある物体の光が当たらない裏の方を示しますよね。一方「蔭、翳」は光の当たらない部分の空間を表します。
つまり影と陰とに挟まれた空間。「蔭」は草の葉によって遮られた空間を示すために艸冠がついていますし、「翳」は、川岸などで鳥が羽を水面を覆うように広げて光を遮って、魚を捕りやすくしている状態からきている漢字なのです。」

今回は「景」に関する考察なので、もう少し調べてみますと、

『古啓念慮 ~文字・書のはなし~』
(篆刻家 中川古啓氏のブログ、http://tenkokuya-kuku.cocolog-nifty.com/blog/)に「景」から「影」への漢字の変化に関する記述がありました。

「(影という漢字のこと)実はこの文字は篆書が使われていた《秦》の時代には存在しない文字で、「影」という字形が発生した時の資料としては《秦》の後の《漢》の時代のものが残っています。それ以前は「影」はどうも「景」と表されていたようです。」

詳しくはサイトをお読みいただきたいのですが、まとめると・・・
古代中国で最初にあった「景」という漢字は、門に日があたって出来た「カゲ」を使って暦を作ったり方位を調べていたことから「カゲ」のことを「景」と言う漢字をあてたもので、「影」はそこに三本の線を足したもの、ですが、この「彡」は美しいものを表す記号として用いられていたそうで、当時の人達が影に美しさを見出していたのかもと書かれています。

「景」は名前にも良く使われる漢字です。竹下景子さん、扇千景さん、志茂田景樹さん、そして歴史上の人物では上杉景勝など。
『名前由来事典』で調べると、この「景」と言う字には「大きい」「めでたい」「偉大」「風情を添える意」などの意味があるそうです。


以上、つらつらとネットで調べたことを羅列してみましたが、総じて漢字自体のイメージは、風景・景色・景観などで使われるとおり、自然のように永い時間を経て造り上げられた壮大で仰ぎ敬うものを表す言葉のように感じました。


さて、いよいよい本題に戻しましょう。
作家の柳井氏が今回の展示タイトルに使った『「蒼」い「景」』の理由についての回答です。

「蒼」は「青(青い空や海のあお)」と「緑(あおあおと茂る樹々のあお)」の2つの色を意味する字であること、「景」は景色や風景の意味光と影の意味があるとのことで、

『豊かな自然を象徴する色として「蒼」という字を当て、その光景という意味で「景」を選びました。  自然(いのち)、光(色彩)と影(形象)といった自分の作品の主題を表したタイトルです。  いのちに溢れ、美しく力強く儚い、そんな自然本来の姿を自分なりに少しでも表現できたらと思い制作しています。』
他にも色々と思いはあるそうですが、そこはいつかご本人の口から直接お聞きしてみましょうか。


・・・今回のタイトル『蒼い景』に隠されたのヒミツのお話、いかがでしたか?
こうやって調べてみて改めて、自然の豊かな色彩に溢れ光と陰が美しい、自然・いのちに対する畏敬の念が込められた柳井氏に作品に心打たれる理由がわかったように思います。

この展示『柳井貴光展 -蒼い景-』は9月30日まで。
明日9月18日(木)は22:00までご覧いただけます。

さて最後に、こちらの一枚をご紹介しましょう。
『山吹草の杜』油彩 247.5 x 89.5

山吹草の杜.JPG



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